バセドウ病の顔つき、目つきの変化とは?症例写真を用いて医師が解説

バセドウ病の症状として、顔つき、目つきの変化がよく挙げられます。
特に多いのが目が飛び出す「眼球突出」です。

この記事では、症例写真を用いて、原因や治療法を詳しく解説します。

監修医師
オキュロフェイシャルクリニック大阪
院長 相川 美和

大学病院皮膚科にて一般皮膚科・レーザー外来・腫瘍外来を担当し、さまざまな皮膚外科手術の経験をつみました。
その後、美容クリニックで美容皮膚科の診療にも従事し、さらに眼形成外科での診療経験も積み、他院で院長を務めました。
2024年よりオキュロフェイシャルクリニック大阪院の院長として、安全で根拠ある医療の提供を心がけています。

目次

目つき顔つきが変わったらバセドウ病の前兆?

バセドウ病では目に変化が現れることがあり、「甲状腺眼症(バセドウ病眼症)」と呼ばれています。
バセドウ病の患者の約25〜50%に発生するとされています。

甲状腺眼症の代表的な症状の一つに「眼球突出」があります。
まぶたが腫れ、目が前方に出てきたと感じる場合は、バセドウ病の可能性を考慮する必要があります。
この症状が引き起こされるのは、目の周囲の筋肉や脂肪が炎症を起こすことによるものです。
特に若い人においては、眼球突出が現れやすいとされています。

治療を行うことで症状を軽減することが可能ですが、症状が悪化する活動期が数か月間続いた後、あまり変化がなくなる非活動期に進みます。
非活動期になると外科的治療が必要になることがあるため、できるだけ早い時期に診断・治療を受けることが大切です。
長期間放置すると目の筋肉や脂肪内の細胞が増殖し、元の状態に戻らない(目が引っ込まない)こともあるため、異変を感じた際には早めの治療が重要です。

バセドウ病の症状

バセドウ病の症状
バセドウ病の症状

バセドウ病の症状は、顔つき、目つきの変化にとどまらず、全身にあらわれます。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を促進し、活力を与えるホルモンです。
この
ホルモンが過剰になるバセドウ病では、体が常に運動しているような状態になり、さまざまな臓器に負担がかかることがあります。

その結果、以下のような初期症状が現れることがあります。

部位 症状
全身 暑がりになる
疲れやすくなる
だるさを感じる
体重減少または体重増加
37.5度程度の微熱が続く
神経・精神 イライラしやすくなる
落ち着かなくなる
集中力が低下する
寝付きが悪くなる
循環器 動悸がある(胸がドキドキする)
息切れがある
頻脈(脈が速くなる)
むくみがある
消化器 食欲の増加または食欲の低下
口や喉が渇く
軟便になる
排便の回数が増える
皮膚 汗をかきやすくなる
髪の毛が抜ける
かゆみがある
皮膚が黒くなる
筋骨 体に力が入らなくなる
筋力が低下する
指や手足が震える
月経 月経不順になる
月経がこなくなる
不妊になる
血液 コレステロール低下
血糖上昇
血圧上昇
肝障害
顔つき・首 目つきがきつくなる
眼球が飛び出たように見える
ものが重なって見える
甲状腺腫大(首の腫れ・しこり)

症状の現れ方は性別や年齢によって異なります。
若い人は首の腫れに気づきやすい傾向がありますが、高齢者の場合、首の腫れが目立たないこともあります。
そのため、外見上は元気に見えることから、周囲の人々が病気に気づかなかったり、自覚できないこともあります。

バセドウ病で発症する目の症状

バセドウ病では、眼球突出によって目が飛び出したように見え、瞬きが少なく目つきが鋭くなることがあります。
バセドウ病に関連する眼の病気は、主に二つのタイプに分類されます。
バセドウ病自体が原因で直接的に現れる原発性症状と、すでに発生した眼の異常が引き金となって続発的に現れる続発性症状です。

目そのものに異常が現れる「原発性症状」

原発性症状には、「眼瞼後退」と「眼球突出」の二つがあります。

「眼瞼後退」は、まぶたを上下させる筋肉が収縮することによって、まぶたが持ち上がったような状態になる現象で、特に上まぶたに見られます。

眼球突出は、眼球を動かす筋肉(外眼筋)やその周囲の脂肪(眼窩脂肪)に炎症が生じ、腫れによって眼窩内の圧力が上昇し、眼球が前方に押し出されることを指します。

目に生じた異常が原因で現れる「続発性症状」

続発性症状には以下のようなものがあげられます。

  • まぶた・まつげの異常
    バセドウ病の続発性症状として、瞼の腫れや逆まつ毛のような症状が現れます。

  • 充血・むくみ
    眼窩内圧の上昇により目の充血やむくみが生じます。

  • 複視
    眼球を動かす筋肉(外眼筋)で腫れが起こり、眼球の動きが悪くなることで、ものが二重に見える複視が起こります。

  • ドライアイ
    眼瞼後退により瞼がしっかり閉じられなくなるため、眼球が乾燥してドライアイが起こります。

  • 眼精疲労
    複視、ドライアイ、視力低下などの症状が軽い場合、ただの眼精疲労のように感じられます。

  • 視神経障害
    眼窩内圧が高まることで、視神経が圧迫されて障害を受けます。視神経が障害されることで、視力低下、視野欠損などの症状が現れます。

バセドウ病の目つき、顔つきの例

バセドウ病・甲状腺眼症には「眼瞼後退」と「眼球突出」の症状が多く見られます。

バセドウ病特有の目つきや顔つきの状態から手術をすることで美しい顔立ちに戻るとなるまでの症例写真を含む当院での手術例をご紹介します。

主訴 治療内容 術前 術後
バセドウ病眼症 ・ステロイドパルス
・眼窩(がんか)減圧
・追加脂肪切除
・斜視手術(他院にて)

治療前後を比較すると非常にキレイになり、顔つきが全く違うことが分かるかと思います。

手術をすることで治療前後の差は一目瞭然で、発症前の美しい顔立ちに戻ることができました。
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症 バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症 眼窩減圧術
眼瞼手術

眼窩減圧術もしくは斜視手術のあとで選択されます。
バセドウ病眼症では上眼瞼が吊り上がる、眼瞼後退という状態になっていることがあり、最後にこの手術を行います。
状態によっては上眼瞼のみならず下眼瞼にも行うことがあります。

また眼瞼に増えた脂肪を切除することもあります。
眼球突出に伴って逆さまつ毛を発症する場合もありますので、その手術を行うこともあります。
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症
顔貌の変化と左右差のある眼球突出

20代女性 発症前の写真

バセドウ病眼症
眼窩減圧術

発症前の顔貌から、術前の顔貌へ大きく変化してしまっていることが分かります。
右目の見開きが大きく、上下の白目の露出が非常に大きくなっています。
それに伴い左右差のある顔貌となっています。

眼窩減圧を行って術後には顔貌がかなり改善しているのがわかります。
さらに減圧をすることも出来たのですが、大きな改善が得られ満足されましたのでこれで終了となりました。
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症
顔貌の変化と左右差のある眼球突出

30代女性 発症前の写真

バセドウ病眼症
眼窩減圧術

眼窩減圧手術により美しい顔つきになっていることが分かります。
体的には上のまぶたの腫れぼったさが無くなり、二重瞼のラインが深くなっています。
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症 バセドウ病眼症
バセドウ病眼症上下のまぶたの腫れ 眼窩減圧術

バセドウ病眼症により術前にあった上下のまぶたの腫れが、 術後には無くなってスッキリした状態になっているのが分かります。
眼球突出が軽減するとドライアイ症状(充血する、ごろごろする、涙目になるなど)も改善します。
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目つき・顔つきが変わる原因は?

目つき・顔つきが変わる原因は?

バセドウ病による顔つきの変化は、バセドウ病の原因と同じく、自己免疫の異常が原因と考えられています。
まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こったり、眼球周りの脂肪が増加したりするなど主に以下のようなものが要因としてあげられます。

  • まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こり、むくんで腫れる
  • 眼球周りの脂肪が増え、眼球が前へ押し出される
  • 過剰分泌された甲状腺ホルモンがまぶた(特に上まぶた)を動かす平滑筋を刺激して収縮させる

バセドウ病による目つきの治療法

バセドウ病による目つきの症状の治療は、関連する要因によって異なります。

1.甲状腺機能亢進に伴う甲状腺ホルモンの異常が原因となる症状

(例:上眼瞼の後退など)

バセドウ病の治療により甲状腺機能が改善されると、症状は徐々に軽減します。

2.
自己免疫や炎症が関与する症状

(例:眼球突出、上眼瞼後退、斜視、眼球運動障害など)


抗甲状腺薬による治療だけでは改善が難しいとされています。
特に
眼球突出は一度症状が現れると回復が難しいため、バセドウ病の他の症状から早期に気づき、治療を始めることが大切です。

原発性症状への治療

バセドウ病の目の症状「原発性症状」への治療として、次のような治療を行います。

  • 平滑筋の働きを抑えるボツリヌス注射
    バセドウ病では、過剰に分泌された甲状腺ホルモンが平滑筋を刺激し、それにより瞼を開閉する筋肉が収縮してしまうため、筋肉を緩めるためにボツリヌス注射を行います。

  • 眼窩組織の炎症を抑える治療
    眼窩組織の炎症を抑えるために治療が行われますが、甲状腺眼症を完全に治すことは難しく、進行を止めて症状を緩和する目的で根気よく治療を続ける必要があります。

  • ステロイド療法
    もっとも一般的な治療法です。
    甲状腺眼症の活動性がある比較的早い病期にステロイド剤を内服すると眼の症状が軽減します。
    また、複視やまぶたの腫れにはその部位にステロイド剤を注射する場合もあります。
    いずれも病期が遅い安定期では、効果が出にくいことがあります。

  • 放射線治療
    眼球突出が著しい場合、眼球の奥の脂肪組織に放射線をあててリンパ球を破壊し、炎症を鎮静させることで眼球突出が軽減します。
    その効果は、眼球突出度計で1~2mmで、完全に治せるほどの効果ではありませんが、病状の進行を止める意味で効果的です。

  • 手術療法
    目を閉じられないほど眼球突出が強い場合、眼窩内脂肪(眼球奥の脂肪)を減らす眼窩減圧術(手術)を行うことがあります。
    また、複視がひどい場合は斜視の手術が行われることがあります。

続発性症状への治療

バセドウ病の目の症状「続発性症状」への治療として瞼・まつ毛の異常に対しては瞼の筋肉を伸長させる手術、充血・むくみ、ドライアイにはそれぞれの症状に応じて適切な治療薬を点眼します。
複視に対しては、手術により外眼筋の位置を調整して改善をはかります。

まとめ

バセドウ病・甲状腺眼症の大きな問題点は、点滴や内服の治療を受けて安定期に入っても、風邪のように治ったら元通りではなく、以前とは全く異なる 見た目・容姿になってしまうことです。
特に見た目の変化が起こるのは、その多くが若い女性であるということが問題です。

英語ではこの醜い眼球突出をDisfiguring Proptosis(眼球突出による醜形)と呼んでいます。
眼球突出になってしまうと「本当に治るのか」「見た目が変わってしまってショック」と感じる方は多くいらっしゃるでしょう。
「内科的な数値が安定すれば眼球突出も治る」などと間違ったことを言われていることもありますが、一度突出したら元には戻りません。

多くの方々がこのような状態に対して苦しんでいますが、バセドウ病・甲状腺眼症に対する手術治療を行っている施設は全国にもほんの数か所程度しかありません。
眼球突出をはじめとするバセドウ病眼症にお悩みの方に向けて、当院では専門的な知識・経験をもとにできる限り整容的な観点を重視した手術を行っています。
他院で手術の適応がないと断られた方々でも当院で手術を行う方は多くおられます。
また治療ができないとあきらめていたため、発症から長い時間経過した方も手術を受けに来られます。
ぜひ一度ご相談ください。

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その後、美容クリニックで美容皮膚科の診療にも従事し、さらに眼形成外科での診療経験も積み、他院で院長を務めました。
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