眼瞼下垂は子供に遺伝する?遺伝する確率や子供の眼瞼下垂の特徴について解説

眼瞼下垂は子供に遺伝するのか?遺伝する確率は?と気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、
子供の生まれつき眼瞼下垂の原因や特徴、治療のタイミング、手術方法などについて詳しく解説しています。
ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

監修医師
オキュロフェイシャルクリニック大阪
院長 藤田 恭史

大学病院などで一般眼科から眼形成外科まで幅広く診療経験を積み、さまざまな手術に携わってまいりました。
眼瞼下垂、甲状腺眼症、涙道の疾患といった目のまわりのトラブルに対しては、見た目の自然さに配慮するのはもちろん、視機能や眼球表面への影響にも十分に注意を払いながら治療を行っています。

目次

眼瞼下垂は遺伝する?

生まれたときからまぶたがうまく開かない眼瞼下垂を持っていると、視力に影響が出たり、姿勢が悪くなったりして、子供の成長に支障をきたすことがあります。
もし両親のどちらかが眼瞼下垂症であれば、その遺伝が赤ちゃんに影響するのではないかと心配になる方もいるでしょう。

眼瞼下垂は遺伝する可能性がありますが、家族に眼瞼下垂の人がいても、必ずしも子供にも遺伝するわけではありません。
むしろ、遺伝とは関係なく発症するケースの方が多いとされています。
子供の眼瞼下垂について詳しくみていきましょう。

眼瞼下垂の種類は2つある

眼瞼下垂には「先天性眼瞼下垂」と「後天性眼瞼下垂」の2つのタイプがあります。
特に子供に多く見られるのは先天性の眼瞼下垂です。
生まれつきまぶたが下がっている状態を指します。

 

先天性眼瞼下垂の主な原因は、眼瞼挙筋の発育不足です。
つまり、まぶたを持ち上げる筋肉が生まれつき弱かったり、その筋肉の動きを司る神経に何らかの異常があることが考えられます。

眼瞼下垂は子供に遺伝する?

眼瞼下垂は子供に遺伝する?

眼瞼下垂には「先天性眼瞼下垂」と「後天性眼瞼下垂」の2つのタイプがあります。
このうち、遺伝的要素が影響するのは、先天性眼瞼下垂です。
特に子供に多く見られる先天性眼瞼下垂は、生まれつきの眼瞼下垂を指します。

先天性眼瞼下垂の多くは、眼瞼挙筋の発育不足が原因とされています。
つまり、まぶたを開けるための眼瞼挙筋の力が生まれつき弱いか、筋肉の動きを司る神経に異常があることが考えられます。

遺伝の確率

遺伝の確率​

眼瞼下垂の遺伝確率は、先天性眼瞼下垂の場合、11.7%~19.4%に家族歴が認められるという報告があり、家族に眼瞼下垂の人がいる場合、生まれてくる子供に遺伝する可能性が高まるということが示唆されています。
家族に眼瞼下垂の人がいる場合は、子供に遺伝する確率が高い傾向にありますが、必ずしも遺伝するとは限りません。
先天性眼瞼下垂の多くは、家族に眼瞼下垂の人がいるかどうかにかかわらず、偶発的に発症します。(Peixuan Wuら, 2022)

実際、先天性眼瞼下垂は、家族に同様の症状を持つ人がいるかどうかに関わらず、偶然に発症することが多いのです。 
この病状を持つ人の約80%は片目にのみ現れる片眼性(一側性)であり、その多くは遺伝的要因とは無関係です。
また、妊娠中のトラブルが影響を及ぼす可能性もほとんどないとされています。

一方で、常染色体優性遺伝によって引き起こされる先天性眼瞼下垂は、両眼性(両側性)であるケースが多く見受けられます。
単純性先天性眼瞼下垂症に罹患した14人の患者とその家族を対象に、5世代にわたる調査結果は以下のとおりです。(PAVONE, Piero 2005)

我々は、5世代にわたる27人のメンバーからなる家族を報告し、そのうち14人が先天性単純性眼瞼下垂症を患っていました。
11 例は片側性、3 例は両側性眼瞼下垂でした。

参考文献

WU, Peixuan, et al. Advances in the genetics of congenital ptosis. Ophthalmic Research, 2022, 65.2: 131-139.

PAVONE, Piero, et al. Clinical heterogeneity in familial congenital ptosis: analysis of fourteen cases in one family over five generations. Pediatric neurology, 2005, 33.4: 251-254.

先天性眼瞼下垂は何人に1人いるのか

海外では、先天性眼瞼下垂に関する研究が活発に行われています。

アメリカでの調査によると、
先天性眼瞼下垂の推定有病率は約842人に1人という結果が出ています   1)。
さらに、イギリスの後ろ向き研究では、小児眼科クリニックで治療を受けた眼瞼下垂症の約14%が先天性であることが報告されています 2)。

参考文献

1) Wasserman BN, Sprunger DT, Helveston EM. Comparing the etiology of pediatric blepharoptosis in the United States to a global cohort: A retrospective multi-institutional analysis. J AAPOS. 2003;7(6):378-383.

2) Lyons CJ, MacEwen CJ, Young JD. A 10-year review of pediatric ptosis surgery in a single-center population: Incidence, associated conditions, and surgical outcomes. British Journal of Ophthalmology. 2004;88(3):361-364.

生まれつき眼瞼下垂の子供の特徴は?

生まれつき眼瞼下垂の子供の特徴は?

生まれつきまぶたを持ち上げる力が弱い先天性眼瞼下垂は、正面を向いたときにまぶたが瞳孔(黒目)を覆っている状態を指します。
この状態は通常、出生時または生後1年以内に確認され、片目または両目に以下の症状が現れます。

  • まぶたが正常な位置よりも下がっている
  • まぶたがうまく開かない
  • 視野が狭くなる
  • 眉を上げて目を開けようとする
  • あごを上げてものを見ようとする
  • 片目がずれて向いている(斜視)

約80%は片目だけに影響しますが、両目に影響がある場合、下垂が軽度であれば周囲が気付きにくいことがあります。
幼少期にまぶたが十分に開かないと視力の発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
片方の目に症状が出ている場合は、見た目の問題も生じるため、早めに形成外科を受診することをおすすめします。

子供が生まれつき眼瞼下垂になる主な原因

子供が生まれつき眼瞼下垂になる主な原因

眼瞼下垂の程度は人それぞれで、まぶたが瞳孔に少しかかる軽度のものから、完全に覆ってしまう重度のものまで様々です。
この状態の主な原因は、眼瞼挙筋の発育不全です。
また、眼瞼挙筋を支配する動眼神経の機能障害や、他の疾患が影響することもありますが、これらの機能障害の原因や眼瞼下垂の発症メカニズムはまだ解明されていません。

子供の先天性眼瞼下垂の要因は主に以下のようなことが挙げられます。

  • 眼瞼挙筋の発育不全
  • 動眼神経の機能障害
  • 他の疾患の影響

眼瞼挙筋の発育不全

眼瞼挙筋は、まぶたを持ち上げる大切な筋肉です。
先天性眼瞼下垂の約90%は、
生まれつきこの筋肉が未発達だったり、うまく機能しなかったりする「単純性眼瞼下垂」と呼ばれる状態です。
そのため、まぶたを持ち上げる力が弱い、または全くないことから、目を開けることができずに眼瞼下垂になってしまうのです。

動眼神経の機能障害

動眼神経の障害によって引き起こされる病気は「先天性動眼神経麻痺」と呼ばれています。
この疾患は、眼瞼下垂の一因ともなります。
動眼神経は、私たちの目を動かすための筋肉を操る重要な神経です。
眼球を内側に引き寄せる「内直筋」、上下に動かす「上直筋」と「下直筋」、そして外側に回転させる「下斜筋」をコントロールしています。
また、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋や、瞳孔の大きさを調整する「瞳孔括約筋」もこの神経の支配下にあります。
開眼や眼球の動きに欠かせない役割を果たしているため、もし生まれつき動眼神経に問題があると、眼瞼下垂になりやすくなるのです。

特に、出産直後から見られる先天性の動眼神経麻痺は、まぶたを持ち上げる「上眼瞼挙筋」の機能不全が主な原因です。
また、眼球の動きには大きな問題がない「単純性眼瞼下垂」であることがほとんどです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、まぶたをほとんど上げることができませんが、1ヶ月、2ヶ月と成長するにつれて、少しずつまぶたを上げられるようになっていきます。

他の疾患の影響

先天性眼瞼下垂は、他の眼の病気や全身の病気と関連していることがあります
時には、以下のような珍しい先天性の神経の障害が原因瞼下垂が起こることもあります。

疾患名 特徴
マーカスガン現象 口を開くときに上まぶたが勝手に上がる。
弱視を合併するケースが多い。
ホルネル症候群 先天性の交感神経障害。
ミオシス(瞳孔が小さい)、顔面の発汗低下、眼瞼下垂の症状が表れる。
重症筋無力症 全身の筋肉が落ちる疾患。
まぶたを上げる筋肉にも影響をおよぼし、眼瞼下垂の原因となる場合がある。

生まれつきの眼瞼下垂で手術が必要な場合は?

先天性眼瞼下垂は、見た目だけでなく、日常生活や健康にも影響を与えることがあります。
以下のような状況や症状が現れたときには手術が必要になります。

  • まぶたが下がることで視力が低下する恐れがある場合
  • 片方の目がズレている斜視が見られる場合
  • 弱視のリスクが高い先天性眼瞼下垂の場合

視力は一度弱くなると、元に戻すのが非常に難しいため、学業やスポーツにも影響が出る前に適切な診療を受けることが大切です。
日常生活に大きな影響を与えるときには、手術をおすすめします。

子供の眼瞼下垂はいつから治療するべき?

子供の眼瞼下垂はいつから治療するべき?

先天性眼瞼下垂は、早期の治療がカギとなります。
多くの場合は3歳以降に手術をおこないます。
不安がある場合は、早めに形成外科を受診し、医師としっかり相談することが大切です。

眼瞼下垂の重症度によって手術に適した年齢は異なるため、注意が必要です。
先天性眼瞼下垂と診断されたら、定期的に診察を受けて経過を観察し、医師の指示に従うようにしましょう。

視力に影響する場合は早期治療が必要

子供の眼瞼下垂は、特に視力が発達する大切な時期(生後1ヶ月から3歳半頃)に、視力の成長に悪影響を及ぼすことがあります。
眼瞼下垂によって視界が狭くなると、目が十分な光を取り込めず、弱視(視力が弱い状態)や斜視(目がずれる状態)になるリスクが高まります。
生まれたばかりの赤ちゃんは、視力がまだ発達しておらず、物をはっきりと見ることができません。

先天性眼瞼下垂を持つ子供は、視力の発達に影響を与え、弱視や斜視を引き起こすことがあります。
そのため、重度の眼瞼下垂で視野が大きく妨げられている場合は、早期の手術が必要
です。

まぶたがある程度開き、ものを見ようとする様子があれば、定期的な診察により視力の発達を観察し、3歳以降に手術をおこなうのが一般的です。

軽度の場合は思春期まで待つ

子供の眼瞼下垂で様子を見られるケースは、視力の発達や症状の軽度さによって異なります。
軽度の場合は、定期的な診察を行いながら成長を見守ることが一般的です。
視力に影響が見られず、早期治療が不要と判断された場合、思春期(約14歳)以降の手術が推奨されます。

成長段階で手術を行うと、顔の変化に伴い再手術が必要になる可能性があるためです。
また、子供の眼瞼下垂手術は、細やかなデザインが求められ、高度な技術が必要です。
そのため、審美的な観点からは、期待通りの仕上がりにならないリスクがあります。

さらに、小学校高学年までは、基本的に全身麻酔での手術が必要であり、大規模な医療機関でしか受けられません。
思春期以降は、顔の成長がある程度落ち着くため、細かなデザインがしやすくなる利点があります。
局所麻酔を使用できるため、身体への負担も軽減されます。

生まれつき眼瞼下垂の治療方法

生まれつき眼瞼下垂の治療方法

主な眼瞼下垂の手術方法は以下のとおりです。

先天性眼瞼下垂の場合は挙筋短縮法では十分な改善が見込めない可能性があり、多くのケースで前頭筋吊り上げ術(筋膜移植)が選択されます。

手術方法 内容
挙筋短縮術 眼瞼挙筋(まぶたを開ける筋肉)の腱膜が延びてしまったものを短くして、まぶた(瞼板)に固定することで、目の開きを改善する手術です。
前頭筋吊り上げ術 まぶたを上げる筋肉(上眼瞼挙筋)が弱く、挙筋短縮術では改善できない場合に、額の筋肉(前頭筋)とまぶたを連結させて、眉毛を上げる力でまぶたを開くようにする手術です。
睫毛上皮膚切除 眉上まぶたの皮膚を切開し、余分な皮膚を切除することでまぶたを高く持ち上げる手術です。
眉毛下皮膚切除 眉毛の下側の皮膚を切除して、上まぶたのたるみを改善し、眼瞼の開きを良くする手術です。

まとめ

子供の眼瞼下垂について遺伝の心配がある場合は、まず眼科を訪れて専門医に相談することをおすすめします。
眼瞼下垂には、生まれつきのもの(先天性)と成長後に発生するもの(後天性)があり、先天性の場合は遺伝の可能性がありますが、必ずしも家族に眼瞼下垂の人がいるからといって遺伝するわけではありません。
実際、遺伝とは無関係に眼瞼下垂を発症するケースが多いとされています。

特に乳幼児の場合、先天性眼瞼下垂は弱視や乱視のリスクを伴うため、早めに専門医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
医師の診察を定期的に受け、経過を注意深く観察しながら、手術が必要かどうかを判断しましょう。

子供の眼瞼下垂Q&A

「子供の眼瞼下垂」について、よくある質問は以下のとおりです。

Q

眼瞼下垂は遺伝しますか?

A

遺伝することもありますが、必ずしもそうとは限りません。
先天性眼瞼下垂の中には遺伝的な要因が関わっている場合もありますが、多くのケースでは非遺伝的です。

Q

生まれつきの眼瞼下垂を示す兆候は何ですか?

A

主な兆候は、出生時または生後すぐに上まぶたがしっかりと開かない、またはまぶたが下がりやすいことです。
さらに、ものを見るときに顎を上げたり、眉を上げたりすることや、眼球を上に向けた際に瞳孔が上まぶたに隠れてしまうこともあります。
これらの症状は片目または両目に現れることがあり、左右の目の大きさに違いが見られることもあります。

Q

子供の眼瞼下垂に気づいたら、どうすればいいですか?

A

まずは眼科を受診し、専門医の診察を受ける必要があります。
眼瞼下垂は、視力の発達に影響を与える可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。
診察では、まぶたの下がり具合を測定したり、視力検査や眼球運動の確認などが行われます。
眼瞼下垂と診断されたら、専門医の指示に従って、適切な治療を受けましょう。

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